敬われているようで、その家来に、
絶えず落ち度を探られているものだ
恐れられているようで侮られ
親しまれているようで疎んじられ
好かれているようで憎まれているものじゃ
大将というものは
絶えず勉強せねばならぬし
礼儀もわきまえねばならぬ
よい家来をもとうと思うなら
わが食へらしても家来に
ひもじい思いをさせてはならぬ
自分一人では何もできぬ
これが32年間つくづく思い知らされた
家康が経験ぞ
家来というものは
禄でつないではならず 機嫌をとってはならず
遠ざけてはならず 近づけてはならず
怒らせてはならず 油断させてはならぬものだ
「ではどうすればよいので」
家来はな 惚れさせねばならぬものよ